私が大切だと考えているのは、次の3点です。
- 自分の好みに気が付くこと
- コンディションの良いワイン（健康なワイン）を手に入れること
- 美味しい飲み方をすること
自分の好みに気が付くこと
どのワインを美味しいと思うかは自由です。高価なワインに対してすら専門家の評価が分かれます。自分の好みの味はどういう傾向なのかを知ることが、まず第一です。
美味しいと思ったワインをいくつか経験すると、風味に対する共通点を発見することができるでしょう。その風味の共通点は、実は「ワインの生産地の共通性」だったり「ブドウ品種の共通性」だったり、他にも「熟成具合の共通性」や「生産者の共通性」などもあるでしょうが、このように好み（個性）の本質に気が付くことが重要です。というのは、ワインはいつも同じ商品が店頭に揃っているわけではないので、飲みたいと思った銘柄が必ずしも手にはいるとは限りません。そんなとき、好みを理解していることが美味しいワインを見つける手助けになるからです。
好みは、時間（経験）とともに変化していきます。初めの頃の好みに固執する必要などありません。知人が美味しいというワインを一緒に飲んで、ワインの世界が広がっていくのも楽しみの１つです。美味しいと思った感性を大切にして、素敵なワインと出会いましょう。
コンディションの良いワイン（健康なワイン）を手に入れること
- ワインの熟成具合を、「赤ワインであればコハクがかったうす茶色は、白ワインであれば茶褐色は、退化して飲むに値しない」と、色合いで判断する基準がワインの本などには載っていますが、私が問題にしているワインの劣化とは、そうしたワインの退化のことではなく、色彩的には飲める状態なのに香りが変だったり味が腰砕けていたり、明らかに異常で、美味しくない状態に変化してしまっていることを指します。コンディションが悪いワインは、販売店でボトルをかざして色合いや透明具合を見ただけでは判断できない劣化を含んでいます。
これまでの数年間、随分とたくさんのワインを飲みました。その中で感じたことは、ワインは、その格付けよりも、また雑誌やインターネットで騒がれている銘柄を飲むことよりも、何より大切なこととして「コンディションの良いワインを飲むこと」に尽きると言うことです。良い銘柄を飲むことを否定しているのではなく、銘柄を第一に選ぶのではなくコンディションを第一に選ぶべき、と主張したいのです。
もちろん、ワインを飲むスタイルは自由ですから、例えばヴィンテージやコンディションに関係なく「とにかくロマネ・コンティを飲む会」を開くようなスタイルが存在することも理解できますが、これはワインを楽しむのではなく、優越感を楽しんでいるのだと私は理解しています。
若いヴィンテージであれば、最近のネット通販などは劣化に至っていないワインを扱っているようです。しかしおおざっぱに言えば今だと1990年台前半よりも古いワインに関しては、特にコンディションが重要だと感じています。
- ワインは「熱、光、振動、匂い、温度差、乾燥」などの影響で劣化すると言われています。飲まれるまでの間にいろいろな影響を受けて劣化したワインは、たとえどんなに有名で高価なワインであっても本来の味（代価に対する満足感）を楽しむことができません。逆に比較的安価なワインであってもコンディションが良ければそれなりに美味しいものです。この辺の事情については、リーファーワイン協会または菊屋大久保酒店のHPに詳細に記載されていますので、興味のある方は一読してみてください。
- 購入したワインを長期間家庭で保管する場合は、保管中の劣化を十分考慮する必要があります。しかしそのような長期熟成を家庭で行わず普通に飲む場合は、海外から輸送中の劣化と、卸店や小売店での保管中の劣化が主な劣化要因だと考えられます。どうすればコンディションのよいワインを手に入れることができるか、それは、良い店で買うことです。そこで、品揃え・販売方法・ワインのコンディションなどを総合的に考えて、私なりの「良い店で買うこと」についてまとめてみました。
▼ 良い店で買うこと
美味しい飲み方をすること
- ワイングラスを用意しよう これは絶対にやってもらいたいことです。たとえ１００円均一のでもよいからある程度の容積とすぼんだ口、長い足を持った、いわゆるワイングラスを買ってください。特にフランスのブルゴーニュ地方のワインを飲む場合は、容積の大きなグラスをおすすめします。
- 飲む温度を大切にしよう 原則として白は冷やして、赤は室温（室温、というのは16〜18℃前後です）を守ります。ただ、熟成した白ワインなどは冷やしすぎない方がよいと感じる場合があります。温度が変わると感じ方が変わるので、最初冷やしておいて、温度の上昇とともにどう変わるかを確かめる（楽しむ）のも結構面白いものです。なお、全体的な傾向として、近年赤は暖めすぎ、白は冷やしすぎで飲まれる傾向が日本では強いという指摘がされているようです。
- 時間をかけて飲もう ワインは抜栓をして空気と触れた瞬間から急激に酸化されながら風味を変えていきます。抜栓直後、数分後、数十分後で香りが全然違ってくることはよくあります。比較的新しいヴィンテージの良いワインでは、素晴らしい香りが出るようになるまでに数時間とか数日を要する場合もあるので、時間をかけて変化を楽しんでみてください。私は、ほとんどのワインを2〜4日かけて変化を楽しんでいます。しかし、十分に熟成した高級ワインは翌日まで持たないので、その日のうちに飲んでしまうことを勧めます。
- 比較試飲しない 比べて飲むと、どうしても「どっちが良い」ということに神経がいったり、美味しいと思う方を飲んだ後に他のに戻れなくなって、せっかくのワインをつまらないものにしてしまいます。勉強のためならともかく、美味しく飲むときにはメインとなるワインを１本に決めることをお勧めします。何本か飲むときには比較にならないようタイプの異なるワインを用意すべきだと考えます。
- 食事と一緒に楽しく ワインは基本的に食中酒です。それだけで飲んだときに強いと感じていた酸味が料理と合わせたとたんに双方を引き立てることはよくあります。これをマリアージュ（結婚という意味）といいます。また、家族や友達と楽しい雰囲気を作りながら飲むことも大切です。
もちろん、一人で悦に入るのも構いません。
- 美味しいと感じればいい ワインの本を買ってくると、プロのテイスティングの方法だとか、ワインの風味を例える様々な表現だとか、いろいろなワインの評価方法などが書かれています。そういうことに興味を持って勉強するのは悪いことではないのですが、プロのように評価できなければいけないというものでもありません。作り手、ヴィンテージ、飲み頃、健康状態など、良いワインを選ぶために必要な知識はある程度勉強する必要があると思いますが（いや、常に満足するワインを選んでくれるお店があればこれも要らない）、飲んだときは「ああ、美味しかった」でも良いのです。気軽に飲むことも、逆に、うんちくを語ったり香りや味を専門用語で評価しながら飲むことも、美味しさの条件だと思います。好きになれば、自然と覚えることもあるし、勉強したくもなるものです。
私も真似事はしてみますが、それを記録したり記憶したりはしていません。覚えているのは美味しかったワインの作り手、ヴィンテージ、ワイン名、買った店、それと美味しかったという記憶だけです。（本当は、まずかったワインも覚えていますが） 私がワインを評価する最大の基準は、「もう１本買いたくなる」かどうかです。
- 毎日飲まない（無理？） 最近感じることは、いくら美味しいから、好きだからといって毎日飲んでいてはいけないな、ということ。同じ花に囲まれていると、きれいだと感じなくなります。同じビデオを観ていると感動しなくなります。ワインも、飲む間隔をあけて時々飲んで、その時ちょっと贅沢をした方が美味しく飲めるように思い始めました。（2002.03.16追加）
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