第1楽章 「激臭」 F dur (屁長調) Grave (荘重に遅く)

 どうせ食べるなら、「できるだけ美味しく」そして「できるだけ臭く」と常にベストを尽くすクサレンジャー。
 どうせ食べるなら美味しいメーカーのシュールを美味しい状態で食べたいし、できるだけ臭くも食べてみたい。

 そんな好奇心から、シュールストレミングの解禁時期に合わせて捕獲された評価が高い2社の商品は、低温で厳重に保管されてきた。

 できるだけ早い時期に試食をしたかったが、主要隊員の都合が合わず、延び延びとなっていた。

 10月29日、Oskars社製シュールの保管担当ワインレッドから、
「爆発しそう」との緊急連絡が入る。一刻の猶予もなくなった我々は、適切な屋外での開催場所を選定する間もなく、対戦を余儀なくされるのである。

 非常に幸運なことに、「バール・ふらいぱん」マスターが店での開催を快諾。禁断のカンヅメの封印が、ついに料理店内で解き放たれる!
 積極的に店と料理の腕を提供してくださったマスター。

 厨房の奥では換気扇が回っていて、すべての臭気がこの場所に集まってくる。逃れることができない場所で仕事を強いられる。

 この日のイベントが大成功だったのは、すべてマスターのおかげであると言ってよい。ありがとうございました。
 さて、これらが対戦相手の外観。

 左の缶は結露していてツヤ消しに見える。試食会を前にして、左は購入直後からずっと冷蔵保管したもの、右の2種は5日間常温保管して発酵を促してみたものだ。

 缶の膨らみ具合が異なることが判るだろうか。(下の缶のエッジを見ると、右側のは浮き上がって影が見えます。それだけ中央が膨れています。)

 オスカー缶の不安定さ。

Oskars社製

  • 正味475g、直径10cm、高さ9cm (大きさはブラック実測)
  • 2000年5つ星受賞、33クローネ(539円)

【記載内容】

Oskars
SURSTROMMING
KYLKONSERV SKALL FORVARAS KALLT
(+4゜ till +6゜)
【記載内容】

1/2 burk
NETTOVIKT 475 GRAM
10-12 st.

O. SODERSTROMS SALTERI AB
TYNDERO - SORAKER - TEL. 060-42555
Bor konsumeras foredecember manads utgang
aret efter pa locket angivet aital.

Gosta Hannells社製

  • 正味300g、直径13cm、高さ4cm (大きさはブラック実測)
  • 2000年4つ星受賞、27クローネ(441円)

【記載内容】

PRIMA
SURSTROMMING
UTAN HUVUD
FRAN
GOSTA HANNELLS FISKSALTERI A -B
Telefon ORNSKOLDSVIK 0660/107 70
【記載内容】

1/4 burk Nettovikt 300g 
lnnehall
c:a 6-8st
stromminger
Lockets Pragling
Forpackad Manad/Ar
Konsumeras fore
SE 2047 EG

さらに、以下の表記も別部分に見られた(画像省略)

KYLKONSERV
SKALL FORVARAS KALLT (+4゜ till +6゜)
 上3枚の画像は、このお店の定番料理の1つ、2種類のピザと生春巻き。これだけでもゴージャス。

 下の3枚はシュールストレミング用に下準備された素材の数々。
 左から赤タマネギのスライスとみじん切り、ハーブの一種デイル(ディール)で茹でたジャガイモ、現地で入手した「クネッケブロート」という、硬いパン。

 これだけ「食」を意識した試食会は、HP掲載を見る限り国内では我々が最初。最高の試食会になるに違いない。 
 苦節1年と11ヶ月。
 「臭気珍味と共に日本酒の文化を守ろう!」 と結成されたクサ・レンジャーは、クサヤを皮切りに、敵の幅を海外にまで広げて対戦を繰り返し、ついに、世界一と言われているボスキャラ、シュールストレミングにたどりついた。

 我々は浮かれていた・・・。

 室内での防臭対策として最善と考えられた開缶方法。

 大きなビニル袋にシュール缶と缶切りを入れて口を固く結び、袋の外から缶切りを操って開けてしまおうというのである。 
 テープカットならぬ缶カットの栄誉は、捕獲功労者のひとり、ワインレッドだ。

 どのくらい中身が飛び出るのだろうかという注目を一身に集めて、今、シュールが開缶される!

「せぇ〜のぉ〜・・・」で「ぶっしゅぅ〜〜〜」

缶の放屁だぁ!
スカすつもりが中身まで出てしまったぁ!!
(ぷす〜)  中身は最初の噴出の後もジワジワと流れ出てきて、いかにも不気味。

 だが、見た目のインパクトが少なかったので案外拍子抜けでもある。

 フタの残りを、もう一人の捕獲功労者オレンジが切り落とす。
???
・・・とそのとき、突然表情が曇ったかと思ったら
!!!
 「うわっ!」

 と反射してしまったオレンジ。

 袋を押してガスが漏れてしまった。外側の袋まで放屁することは考えていなかったのだ。
 ドォォォォォン!

 これが、超危険な開缶直後のシュールストレミングスである。


 茶色く濁った液体に、柔らかい魚が浸っている。

 そして、いまだにブクブクと泡を立て続けていて、発酵という名の腐敗が現在進行中であることが伝わってくる。

 半端に新鮮みが残っている分、気持ちが悪い。


 とにかく、まずはこの激臭を体験してみようではないか。
!!
 「ごっほごっほごっほごっほーーー!」

 激しく咳き込む。


 「・・・・おえー、胃がひっくり返って吐き出そうになった」
 と、ほとんど死にかけたワインレッドの一瞬。

 向こうは、室内の臭さに耐えきれず、排気ガスの混ざった外の空気に呼吸の場を求めて顔を出したゴールド。
どわっ!
 「ごぉっほ、ごっほ、うおっほ、ごっほ、ごっほ、ぐぉぉぉぉっほ」

 と、有毒刺激ガスを吸い込んだかのような激しい咳。


 ブラックの逃げ出すのの早いことったら!
 どうせ人の食べるものだろ と見くびっていたマスターが、こんな危険な毒アンパン。

 向こうでブラックとオレンジが、「絶対無理だ」と思いつつ見ている。
 瞬時に 「うわぁぁぁぁぁ」

 それ、言わんこっちゃない。
 マスター、もう店の中で開けちゃいましたからね。もうキャンセルなしですからね。
 そして、某報道機関関係者も瞬時に反射し、顔を背ける。 

 そう、シャッターを押すまでのタイムラグを最小限に抑えてクサ顔を撮影すべく投入したはずの銀塩カメラ。ところが、「クサ顔!」と思って押した時には向こうを向いてしまっているのだ。
 それほど、瞬時に強烈な反射を起こすにおいが、この缶詰から立ち上っていた。
 もの凄い臭いに呼吸の苦しさを味わいながらも、我々は、もう1社のシュールを開巻する。

しかしこれも激臭。
 シュールとクサ顔を撮影したかったブラウンも、自己の生命維持に全精力を注いでいる。

 臭すぎる。

 そして、Oskars との違いは、こちらの方が硫化水素(別府温泉の温泉的臭い)が強いことだ。
じゃ〜ん!
 開けた2社のシュール。

 臭いを配送できないのが残念でならない。

 見ている方のほとんど全てが画面から顔を背けて「くっせ〜、臭過ぎ!」と言ってシャットダウンするに違いないと思えるほどの刺激が、立ち上っている。
 腹の中にはカズノコが。
【総括】

 シュールストレミングの臭いとは・・・

 1. 流しの三角コーナーに捨てた肉と野菜が腐敗た臭い
 2. 温泉の噴気の臭い
 3. どぶの臭い
 4. 以前食べて最悪の評価を下した「臭豆腐」とよく似た臭い

 何かニガいようなイメージ。

 さあ、大変なことになってしまった。こんなに臭い食材を、とうとう食べなければならないのだ。相当強力な敵であることが予想される。この時点で、ゴールドと某TV局関係者はほとんどギブアップ。
 重苦しい空気に包まれる。
 会話が少ない。

 第1楽章、荘重に遅く・・・END

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